滋賀県ドーナツを作って「急がば回れ」に思いを馳せる
ドーナツ県だと思っていたのに
滋賀県に行く用事があった家族に「お土産何がいい?」と聞かれて、何の気なしに「滋賀県ドーナツかなぁ」と言ったら、「そんなものない」と速攻で却下された。
ほんとですか????
Googleで滋賀土産を調べてみたところ確かに見当たらない。「日本の都道府県の中で一番ドーナツっぽいのはどこ?」と聞かれたらまず間違いなく99%の人間が滋賀県と即答するであろうに、県の形を模したドーナツがお土産として推されていないとは驚きである。
滋賀県HPを見るとなんと滋賀県の形は取り立ててアピールされておらず、アイコンとして使用されているのはもっぱら琵琶湖の形のみであった。さすがmother lake 琵琶湖、県民のアピールポイントは"県"ではなく県の6分の1の面積を占める琵琶湖のようだ。
にわかには信じられない事態に私の心は滋賀県ドーナツを求める幽鬼と化した。滋賀県ドーナツを食べたい!見てみたい!がしかし、存在しない。ならば作るまでである。
話はそれるが井の頭公園にはねこちゃん型のドーナツがあるらしい。ドーナツにしにくそうな哺乳類がドーナツ化されているのに、なぜ滋賀は手付かずなのか…。謎は深まるばかりだ。
型作りから始めよう
滋賀県型にうまく生地を成型できる手先の器用さがあれば早速ドーナツ作りに取り掛かりたいところだが、その自信はないので型作りから開始した。急がば回れである。私はこのために3D CADソフトをダウンロードし、モデリングを勉強し、3Dプリンタまで購入してしまった。滋賀県ドーナツにとりつかれた人間の末路である。CADソフトはFusion360を使用。3DプリンタはQIDI technologyのX-makerを使用した。
モデリング方法は簡単で、「CADソフト上で日本地図から滋賀県の形をトレスし、その線画のデータをz軸方向に押し出して立体にする」だけ。この文字であらわすと1行だけの工程でなんと数か月詰まった(型の天地を180度ひっくり返す方法がわからなかった)。モデルがおおよそできたのちも、プリント外注の見積書を見て価格に驚き数か月放置。その後突如やる気を出して3Dプリンタを購入、ほぼ1年越しにCADソフトに真摯に取り組み細部を修正して、ようやくモデルを完成させた。
3Dプリンタ召喚
モデルができたところで早速印刷してみよう!
ドキドキ…
あ、あれ、…??
なぜか3Dプリンタの独断で琵琶湖が完全に埋め立てられてしまった。日本最大の湖に恨みでもあるのだろうか?プリンタの出力設定(インフィルとか)もいじってみたが改善することはなかった。CADソフト上では問題なく表示されているので訳が分からない。深入りしても解決しなさそうだったので再度モデリングをし直して一回り小さく出力し事なきを得た。急がば回れだ。
深夜のおやつにドーナツを少々
早速完成した型をよく洗って、ドーナツ作りを開始!恐る恐る生地を伸ばし型抜きをしてみたら…。あれ、意外といいんじゃない???
型抜きできたら、クッキングシートに乗せたまま170度くらいの油に投入。
こんがりと火を通して…、できたのがこれである!!!!!
滋賀みがすごい!!!!!!生地が膨らみすぎると琵琶湖がつぶれるだろうと予測してイーストドーナツではなくオールドファッションドーナツ生地にしたのが良かった。思ったより、滋賀県だ。一方で…
とても不思議なことに琵琶湖は完全にフライドチキンになった。滋賀県ドーナツの一連の取り組みの中、琵琶湖は埋め立てられたりフライドチキンになったりさんざんである。
まずは琵琶湖ドーナツから食べてみる。思いのほかさくっとした食感。うまい!ちょうど一口サイズで、少々つまむのに適している。南側の部分が特にかりかりで駄菓子感がありおいしかった。
次は滋賀県ドーナツ。これは…!湖西地方と湖東地方で食感が全く違うのがおもしろい。さくさくの湖西にもふもふの湖東、歯ごたえにメリハリがあって深夜にもかかわらず大きめの一個をぺろりと平らげてしまった。
ちなみに彦根から甲賀・信楽にかけての"もふもふエリア"は生っぽくなりやすかったので注意が必要だ。また、一個ひっくり返すのに失敗して大津・彦根・長浜付近で折れた。もろい部分があるのでフライ返しで丁寧に返すのがいいだろう。
滋賀県ドーナツを食べるという念願がようやく叶って、心もおなかも満たされた夜だった。
琵琶湖大橋を作った人は天才
さて、揚げあがったドーナツをもう一度よく見てみよう。
そう。琵琶湖南部にかかる琵琶湖大橋付近が閉鎖されているのだ。
つまりなるべく湖幅が狭く、橋を架けるリソースが最小にできる部分に橋を架けたということなんだろう。なんて言ったって、相手は「急がば回れ」の語源になった琵琶湖である。そんな琵琶湖を「回らずに突っ切る」ための橋の建設には、それはそれは入念な計画があったはずだ。琵琶湖大橋がどれだけ理にかなった場所にかかっているのかドーナツづくりでよくわかった。
どちらかというと「当たって砕けろ」型人間の私は、「急がば回れ」と自分に言い聞かせつつ滋賀県ドーナツをもふもふと食べるのでした。
ご参考まで
今回作成したモデルはthingiverseにuploadしました。どうぞ滋賀ドーナツを作ってみてください!(クッキーもよさそう)
https://www.thingiverse.com/thing:4793820
オールドファッションドーナツ生地はこちらを参考に作成しました。おいしかったです!
2020/3/21 記事中の南北の記載が間違っておりましたので訂正しました。地図を読むのが苦手な方向音痴ゆえのミスです。ご指摘くださった皆様、ありがとうございました!