ありくいブログ

ありんこみたいなちいさな知識を沢山喰って生きていく

自作ミニ輪針で靴下は編めるのか?

3Dプリンタで作った道具は使えるのか?

先日、はまりにはまっている3Dプリンタで、自作の輪針を出力してみた。

3Dモデルのアップロードサイト:Thingiverseで輪針のモデルを見かけたことがきっかけだった。

www.thingiverse.com

 

何か趣味を持っている人は一度このサイトをのぞいてみてほしい。

こんなものもつくれるの…??3Dプリンタ便利すぎぃ~~!!!!!!と絶叫するに違いないからだ。

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"knitting"で検索すると、ヤーンボウルからマーカーから、かわいい編み物道具が一通り出てくる

ページを眺めているだけでも心躍る。もちろんアップロードされているモデルをプリントするのも大変楽しいが、自分のニーズをピンポイントで満たすには自分で設計するのが一番だ。まさに私が欲していたのが、冒頭の靴下編み用のミニ輪針であった。

 

ミニ輪針とは

靴下を編むときには、複数の棒針を使用するか、またはこのような輪針を使用するのが一般的だ。

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https://item.rakuten.co.jp/auc-terai/addi-race-775-7/ より引用

靴下用の輪針

輪針は一つあれば靴下を編めてしまうので、棒針を複数本使用するよりも手軽である。輪針は万能で、靴下のように輪状に編みたいときはもちろんのこと、平面的に編むことだってできる。靴下/小物用サイズの輪針とその他いろんなサイズの輪針が入った輪針セットを持っておけばたいていのものは編めるようになる。

なんにでも使える便利な輪針だが、靴下編みに特化した輪針も存在する。それがミニ輪針だ。ちょうど靴下の径にあったサイズの輪針を作れば、シームレスに編み続けることができる。早速作ってみよう。

 

 

設計はいつも適当

どれくらいのサイズで出力すれば正解なのか不明なので、まずはあたりをつけて試作してみる。何回も試行錯誤ができるのが3Dプリンタのいいところ。

紙に設計図をかいて、手で持ってみて雰囲気を確かめる。

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持ってみた感じ、これくらいのサイズで行けるか…??

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各部分の長さを測って記入。雑だがこれを設計図と呼ばせてもらう。

そして図の各パーツの長さを測り、設計図を作る。

それをもとに作成したのがこちらのモデル。

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悪くないかな。

私が靴下編みに使用しているのは1号という太さの針なので、この輪針も1号(直径2.4 mm)で設計してみた。

 

出力すると…

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針先の間隔を変更した。ほぼ設計図通り!

設計図をもとに出力したので一致するのは当たり前なのだが、見事に重なるとうれしい。 

 

 

これを使って編んでみよう

喜び勇んでキャストオン!!!!

…したのだが。

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なんと輪針が微妙に大きくて、靴下一周分の網目が対岸に届かない

慌てて再設計した。7 cmとしていた直線部分を6 cmに変更して出力。

おお、これでするする編める。

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使える!使えるぞ3Dプリンタ輪針!!!!!

この状態でtweetしたところ、編み物人の方々には興味をもっていただけたみたい。

 

 

だがしかし!!!!「完成した」といえるのは、この輪針を使って靴下を編み終わってからな気がする。今まで編んだ靴下とちゃんと同じサイズに編めているのかもとても重要なポイント。ということで、この輪針でゲージが狂っていないか確認だ。以前既製品の輪針で編んだ"もぐらソックス"を、同じ毛糸・同じ目数で編んでみて比較しよう。

もぐらソックスというのは、梅村マルティナさん考案のつま先がない手編み靴下のこと。コットン糸で編むと、これからの季節にめちゃくちゃ使えるのだ。

 

 

もくもくと編む

表編みと裏編みだけの単純なパターンの部分はものすごいスピードで編める。意外とカーブ部分がしなるので、窮屈な感じもしない。

一方でそれ以外の編み方(二目一度やねじり増し目など)はかなりしんどかった。針の自由度は低いので、無理に編もうとすると針に負荷がかかって折れてしまう。マチの部分が特に編みにくかった。最終的に編みにくい増し目部分などははかぎ針で編むようにすると、以降は全くストレスなく進めることができた。

針が折れてしまったのは、使用したフィラメントがPLAだったからかもしれない。PLAフィラメントは造形が簡単だがややもろいのが難点。今度出力するときには丈夫なABS樹脂のフィラメントを使ってみよう。

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今回の尊い犠牲

また、3Dプリンタでプリントした物品にはバリがあるので、ストレスなく使用するには一工夫が必要だ。手でバリをちぎり取る程度では針先の引っ掛かり感は解消されないので、やすりなどで削ってやるとよい。爪切りについているやすりの部分がバリの処理にちょうどよかった。

 

そんなこんなで。完成!

 以前既製品の輪針で編んだもぐらソックスと並べて比較する。

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わーい!ほぼ一緒!

すでに編んであった方は数回着用して洗濯もしているのでちょっとしわくちゃですが…

期せずして、今回使用したのは細かい段染め模様が入っている毛糸だったので、ゲージがずれているかの確認に最適だった。サイズも、模様も、前回作成したものと大きなずれなし!

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重ねて置いてみても柄そろって見える~!

これはちゃんと編めたといってもいいのではないだろうか。

 

 

結論

ということでまとめると、

3Dプリンタ輪針で靴下は編める!

以下はメモ。

  • バリはやすりで研いだらおっけー!
  • 負荷がかかる編み方は避ける(かぎ針併用で解決!)
  • PLAよりABS樹脂が良い?(今後要検討)

 

今までの私の3Dプリンタ制作日記を振り返ってみると、オブジェやおもちゃを出力するより、"何かを作るための道具"を出力することが断然に多い。道具を自分で作れると、制作の幅が格段に広がると感じた。だから趣味人にこそ、3Dプリンタはおすすめ。使ったことがないと何に使えるかいまいちピンとこないと思うが、一度感覚をつかむと出力したいものがどんどん思い浮かんでくると思う。

今度は模様編みが簡単になる針でも設計してみようか。新しい形状の針を思いついたら、新しい編み方の発明につながるかもしれない。試して、作り直して、もう一度作ってみて…いつか、誰もたどり着いたことのない境地に到達してみたいな。